いつもお読みいただいてありがとうございます。
北風が運んで来るおいしいものの匂いを、くんくん嗅いでは日々癒されているスペードでございます!
さて、今回は、アリスの物語に登場するキャラクターをご紹介したいのですが、『鏡の国のアリス』に登場する、大きな卵のようなこちらのキャラクターはご存じですか?
スペードは、卵料理も大好き!オムレツはたくさん卵を使いますので、もったいなくてなかなか作りませんが、ハムエッグならときどき、グラハムブレッドに挟んで朝食にいただきます。
でも、彼ほどの大きさの卵ならば、お城中がおなか一杯になるほどのオムレツができそうですね!
今日は、大きくてミステリアスなハンプティ・ダンプティのお話をご紹介します。
アリスは羊に変わってしまった白の女王が営む小さなお店で、卵を買いました。
突然店のお客になっていたアリスは、何か買わなくてはいけないと思い、「卵を一つ」と注文しますと、一つ5ペンス、二つで2ペンスだよ、と白の女王の羊はいいました。
あら、一つより、二つの方がお安いの?といってアリスが財布を出すと、羊の女王は、お前が二つ買ったら、必ず二つとも食べるのだよ、と言います。
慎重なアリスは、不味い卵を二つも買ったら取り返しがつかないと、一つ分のお金を羊の店主に渡しました。
さらにこの店のルールでは、買った商品は自分で棚から取らなくてはいけません。
卵に近づくアリス、でもなぜか店の椅子には枝が生え、足元には急に小川が流れ始めました。
なんてばかばかしい、これなら私が買った卵にも早々に枝が生え始めるのかしら、とアリスは思いました。
ところが、その卵は、アリスの思惑をはずれ、あれあれという間に、どんどん大きく、大きくなっていきます!
そして、遠くにあるように見えた卵に数フィートまで近づいて、人間のように手足や目鼻のついているのが見えたとき、アリスには、それがまさに「ハンプティ・ダンプティ」だとわかったのです!
マザーグースをたびたび読み聞かせてもらっていたアリスは、そこに出てくる「ハンプティ・ダンプティ」の詩も暗唱できるほどよく知っていました。
ハンプティ・ダンプティ 塀の上
ハンプティ・ダンプティ 落っこちた
王様の馬と兵隊が
そろって助けに行ったけど
とうとうもとにはもどらなかった
(脇 明子訳『鏡の国のアリス』岩波少年文庫 刊 より)
けれど、アリスの「本当に卵そっくり」という独り言に、彼が不機嫌になったところから、容赦ない会話が始まります。
ハンプティ・ダンプティは、とても気位が高いのです。そして、自分の名前が、まさに自分の美しい体つきを表現している事もご自慢なので、アリスの名前を、なんの意味も無いマヌケな名前だ、と腐(くさ)します。でも、どちらかというとおせっかいなアリスは、そんなことより、とてもうすい塀の上に腰かけている彼が、いまにも落ちやしないかと心配でしょうがありません。
地面に降りたら? どうして一人で塀の上にいるの? というアリスの質問に対して、ハンプティ・ダンプティは、それは他にだれもいないからだよ! となぞかけのようなかみ合わない答えを返してきます。
それから、聞いて驚くなよ!とばかりに、自慢しました。
万が一自分が塀から落ちたらなあ、王様は約束してくれたんだ、王様のすべての馬とすべての兵隊を出して、自分を拾い上げてくれるのだ!
ところがそんなこと、マザーグースを読んでとっくに知っていたアリスは、彼の説明に先回りして答えたのでまたまた失敗。ハンプティ・ダンプティを不機嫌にしてしまいます。
さて、ではここでクイズです!
ハンプティ・ダンプティが、首か腰かもわからない場所に巻いている、きれいな幾何学柄の、「ベルト」だか「ネクタイ」だかわからないものが、一体なんだかご存じですか?
それが巻かれている場所は、彼の「首」でしょうか?それとも「お腹」なのでしょうか?でも、ご覧ください。そんなこと、本人以外にわかりますか!!?
アリスはここでも答えを間違えて、彼を思いっきり不機嫌にさせてしまったのですが、それは無理もありませんよねえ。
実は彼曰く、これは、白の王様と女王様からいただいた非誕生日プレゼントの「ネクタイ」なのだそうです。
え?「非誕生日」のプレゼントってなんだって?
これこそが、マザーグースからスピンアウトした、誇り高き理屈屋、言葉の操り師たる、『鏡の国のアリス』のハンプティ・ダンプティを有名にした名文句なのですよ!
1年に1日しか貰えないのが誕生日プレゼント。しかし非誕生日なら、365日のうち誕生日ではない364日すべてがあてはまります!364日、来る日も来る日もお祝いしてもらってプレゼントも貰えるって理屈です。
自分のために用意された誕生日プレゼントとケーキを前にして、ああ、毎日がお誕生日だったらなあ、と思ったことのあるお子たちのなんと多いことか!!
毎日がお正月だったらなあ~って、スペードなんて未だに考えますけどね。子どもにとって、なんて抗いがたい魅力を持った理論なのでしょう!
この驚くべき「非誕生日理論」をハンプティ・ダンプティは、「この上ない栄光」だの、「反論の余地がないほど完璧!」だのと自画自賛してうっとりしますが、アリスは次々に繰り出されるハンプティ・ダンプティの言葉のパンチに戸惑うばかり。
しかしハンプティ・ダンプティは、言葉をあやつる自分に絶対の自信を見せています。
そこで、アリスは、こんどは、言葉の操り師ハンプティ・ダンプティに、自分が鏡の国に入って最初に手に取った不思議な詩、「ジャバウォッキー」についての解釈を教えてほしいとお願いしてみました。
すると彼は、見事に、聞かれたほとんどの語句についての解釈を示し、またアリスのために作った詩すら暗唱してくれたのです。
そして暗唱の最後、彼が「さよなら」と言い、別れの時が訪れます。
アリスもその時が来たことを悟り、「さよなら、またお会いしましょう」と挨拶すると、なんと、ハンプティ・ダンプティは握手するために指一本だけ差し出し、もし今度お前に会ったとしてもわからないだろうさ、人間はどれも同じ場所に目鼻口が付いていてまるで区別がつかないからなー、口がてっぺんにでもついていれば別だろうが、とのたまうのです。
そんな言われ方をされて、ほとほと面食らうアリスなのでした。
そうして別れたハンプティ・ダンプティに対し、ちょっとした不愉快な気持ちを、口に出そうとした瞬間、ドーンと、大きな何かがおっこちたような衝撃波が森中をゆらしました。ネガティブなアリスの気持ちも吹き飛ぶような、大きな音!!
結果、ハンプティ・ダンプティは誰かに救われたのでしょうか!?
気になる方は、どうぞ『鏡の国のアリス』をお読みください!
マクミラン・アリス公式サイトの「アリスの本のページ」でもご紹介しています。